伊澤大使挨拶(第1回) 「ともに歩もう!(Nous marcherons ensemble!)」
令和4年3月17日
皆さまこんにちは。この2月に駐セネガル日本国大使として着任した伊澤修です。1週間前サル大統領に信任状を捧呈し、正式に活動を開始いたしました。
私はセネガルに初めて来ました。ダカールで暮らし始めてから毎週末街に出て人々の暮らしを見ていますが、コーランの祈りとともに市場には人があふれ、あちこちで建設工事が進んでいて、すごく活気がある街だと感じます。
日本とセネガルは、長年の友好関係に基づき既に深い絆を有しておりますが、本使としては、自分の任期において、この絆を更に太く強固なものにしたいと考えています。
日セネガル関係に対する私の信条は、日本とセネガルが「ともに歩もう(Nous marcherons ensemble)」というものです。このメッセージは、大統領へのお土産として用意した、我が国の伝統工芸品である掛け軸に日本語と仏語に記してサル大統領にお伝えしました。大統領にも賛同して頂きました。
この信条を踏まえ、以下の3つの柱で両国関係を一層発展させていきたいと考えております。すなわち、(1)二国間関係の深化、(2)国際条理、就中アフリカ全体を視野に入れた協力、(3)将来に向けた中長期的な視座に立った協力です。
(1)二国間関係の深化
従来、日本とセネガルは経済協力を中心に二国間関係を発展させてきました。セネガルの発展に日本の経済協力が大きな役割を果たしてきたことはここにいる皆様もよくご存じの通りです。しかしながら、セネガルは既に中進国に向けて大きく発展を遂げつつあります。我が国としてもこうしたセネガルの発展段階に応じた二国間関係を構想する時期に来ていると思います。即ち、(i)引き続き経済協力を積極的に進めるとともに、それに加えて、(ii)ビジネス分野・科学技術分野での協力を発展させるとともに、(iii)人的交流・文化交流を更に活発化させたいと思います。
(i)経済協力については、従来の人材育成と技術移転を重視した無償資金協力や技術協力に加え、マメル海水淡水化計画やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ支援プログラムといった円借款が始められ、更に官民連携による日本の高度な技術を活かした支援、日本のNGOとの連携案件等、様々な形態の新たな協力が開始しています。
(ii)ビジネス・科学技術分野でも新たな取り組みが生まれています。本使は、着任してからまだわずかですが、既に何人かの日本企業の方々とお会いする機会がありました。例えば、ある日本の会社はセネガルの未電化地域に太陽光を利用した発電、通信機材を届け、村人の暮らしの改善を助けています。別の日本の会社はセネガル北部でトマトの栽培に取り組んでおり、今年は記録的なトマトの大収穫を収めました。あるいはセネガル中部の農村では、別の日本の企業の取り組みにより農業経営をデジタル化した全く新しいモデル農村の試みが進んでいます。更には、日本の有名な大学の医学部がパスツール研究所との医療分野での共同事業の実現に向けて動いています。最新の科学技術を使ったこうした協力は全く新しい動きです。
(iii)人的交流や文化交流も人と人との心の絆を強める上で特に重要です。本年はコロナ禍で一時停滞した海外青年協力隊の活動が再び活発化することが期待されます。日本では、青年協力隊のOB達が中心になって「ボックジャンバール」という団体を作り、セネガル関連のイベントを催しています。大学レベルでは京都精華大学がセネガルとの学術協力を積極的に進めています。また、着任して多くの方から、日本のマンガやアニメがセネガルの若者の間に人気があると聞いて驚きました。これまでも日本大使館は伝統的な日本の文化・スポーツである俳句や柔道・空手等の武道の促進に努めてきましたが、今後は漫画やアニメ等のポップカルチャー分野の交流も強化したいと考えています。そしてセネガル人も日本人もお米を食べるという共通の食習慣があります。私は和食をもっともっとセネガルの方々に知ってもらいたいと思います。伝統的な日本文化や武道、ポップカルチャー、そして和食も、日本人や日本の社会をセネガルの皆さんに理解して頂く重要なツールだと考えています。
以上申し上げた3分野に関係を強化することにより、本使としては、日セネガルの二国間関係を「包括的」に進めていきたいと考えています。
(2) 国際社会及びアフリカ全体を視野に入れた協力
日本は本年8月にTICAD8を開催いたします。そしてセネガルは本年AU議長国を務めています。そこでアフリカ全体の平和と発展を目的とするTICAD8の成功に向け、議長国セネガルとアフリカ全体を視野にいれながら協力を進めたいと思います。
残念ながらアフリカではセネガルの周辺の地域も含めて紛争が絶えません。TICADが目指す経済発展の前提として平和と安定が確保されなければならず、「平和と安定」はTICAD7の一つの柱と位置づけられています。日本政府はTICAD7から紛争の根本原因への対処を内容とするNAPSAを提唱しています。この地域の安定のため、さらにはアフリカ全体の安定のためにセネガルの果たす役割は重要であり、ダカールフォーラム等、日本政府はセネガル政府の取り組みを高く評価し、必要な支援を行っています。
アフリカからは離れた地域での紛争ですが、今、世界は深刻な危機に直面しています。今この瞬間も多くの貴重な命が奪われています。アフリカにおける自由民主主義の牙城ともいえるセネガルは日本と基本的価値を共有しており、我が国の平和外交にとって貴重なパートナーです。両国は、国際問題の対処に当たって、国連その他の国際条理で緊密に連携をしてきましたが、このような世界的危機に対して、自由と民主主義を守るために更に一層協力しなければならないと思います。
(3) 中長期的な視座に立った協力
私は、自分の任期中、将来を見据えた中長期的観点からも二国間関係を進めたいと考えています。TICAD8の次にはTICAD9の開催が期待されます。2025年には大阪万博が日本で開かれます。そして、2026年にはユースオリンピックがセネガルで開催される予定です。
TICAD9の具体的な開催時期及び開催地については、まだ何も決まっておりませんが、2016年のケニア・ナイロビでのTICAD6以降、TICADは3年ごとに日本とアフリカで交互に開催されていますので、予定通りであれば、TICAD9は2025年の大阪万博と同年に開催されることが見込まれます。大阪万博はアフリカの発展を世界に示す良い機会になるでしょう。多くのアフリカ諸国の参加を得ることによって、大阪万博を「アフリカの万博」とできるよう、皆様と協力して参りたいと思います。この点はサル大統領にもご賛同いただきました。
2026年のユースオリンピックに向けても協力を一層推進していきたいと思います。先般、セネガルにおける空手道場建設計画の文書に署名を行ったところです。また、日本大使館は毎年、セネガル柔道連盟・空手連盟と協力して柔道・空手の大使杯を開催しております。2026年に多くのセネガル選手がメダルを獲得できるよう、引き続きスポーツ協力を促進して参ります。
以上が、着任に当たり皆様に申し上げたかった本使の所信の表明です。
日本を出発する前に以前セネガルに住んだことのある多くの方々にお会いしました。皆さんは今もセネガルが大好きでセネガル時代を懐かしがっていました。私も将来そのような一人になりたいと思います。
冒頭に申し上げたように、私は日セネガル関係の一層の発展のために、セネガルの皆さんと共に歩みたいと思います。皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
「セネガル、日本、ともに歩もう」!!
私はセネガルに初めて来ました。ダカールで暮らし始めてから毎週末街に出て人々の暮らしを見ていますが、コーランの祈りとともに市場には人があふれ、あちこちで建設工事が進んでいて、すごく活気がある街だと感じます。
日本とセネガルは、長年の友好関係に基づき既に深い絆を有しておりますが、本使としては、自分の任期において、この絆を更に太く強固なものにしたいと考えています。
日セネガル関係に対する私の信条は、日本とセネガルが「ともに歩もう(Nous marcherons ensemble)」というものです。このメッセージは、大統領へのお土産として用意した、我が国の伝統工芸品である掛け軸に日本語と仏語に記してサル大統領にお伝えしました。大統領にも賛同して頂きました。
この信条を踏まえ、以下の3つの柱で両国関係を一層発展させていきたいと考えております。すなわち、(1)二国間関係の深化、(2)国際条理、就中アフリカ全体を視野に入れた協力、(3)将来に向けた中長期的な視座に立った協力です。
(1)二国間関係の深化
従来、日本とセネガルは経済協力を中心に二国間関係を発展させてきました。セネガルの発展に日本の経済協力が大きな役割を果たしてきたことはここにいる皆様もよくご存じの通りです。しかしながら、セネガルは既に中進国に向けて大きく発展を遂げつつあります。我が国としてもこうしたセネガルの発展段階に応じた二国間関係を構想する時期に来ていると思います。即ち、(i)引き続き経済協力を積極的に進めるとともに、それに加えて、(ii)ビジネス分野・科学技術分野での協力を発展させるとともに、(iii)人的交流・文化交流を更に活発化させたいと思います。
(i)経済協力については、従来の人材育成と技術移転を重視した無償資金協力や技術協力に加え、マメル海水淡水化計画やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ支援プログラムといった円借款が始められ、更に官民連携による日本の高度な技術を活かした支援、日本のNGOとの連携案件等、様々な形態の新たな協力が開始しています。
(ii)ビジネス・科学技術分野でも新たな取り組みが生まれています。本使は、着任してからまだわずかですが、既に何人かの日本企業の方々とお会いする機会がありました。例えば、ある日本の会社はセネガルの未電化地域に太陽光を利用した発電、通信機材を届け、村人の暮らしの改善を助けています。別の日本の会社はセネガル北部でトマトの栽培に取り組んでおり、今年は記録的なトマトの大収穫を収めました。あるいはセネガル中部の農村では、別の日本の企業の取り組みにより農業経営をデジタル化した全く新しいモデル農村の試みが進んでいます。更には、日本の有名な大学の医学部がパスツール研究所との医療分野での共同事業の実現に向けて動いています。最新の科学技術を使ったこうした協力は全く新しい動きです。
(iii)人的交流や文化交流も人と人との心の絆を強める上で特に重要です。本年はコロナ禍で一時停滞した海外青年協力隊の活動が再び活発化することが期待されます。日本では、青年協力隊のOB達が中心になって「ボックジャンバール」という団体を作り、セネガル関連のイベントを催しています。大学レベルでは京都精華大学がセネガルとの学術協力を積極的に進めています。また、着任して多くの方から、日本のマンガやアニメがセネガルの若者の間に人気があると聞いて驚きました。これまでも日本大使館は伝統的な日本の文化・スポーツである俳句や柔道・空手等の武道の促進に努めてきましたが、今後は漫画やアニメ等のポップカルチャー分野の交流も強化したいと考えています。そしてセネガル人も日本人もお米を食べるという共通の食習慣があります。私は和食をもっともっとセネガルの方々に知ってもらいたいと思います。伝統的な日本文化や武道、ポップカルチャー、そして和食も、日本人や日本の社会をセネガルの皆さんに理解して頂く重要なツールだと考えています。
以上申し上げた3分野に関係を強化することにより、本使としては、日セネガルの二国間関係を「包括的」に進めていきたいと考えています。
(2) 国際社会及びアフリカ全体を視野に入れた協力
日本は本年8月にTICAD8を開催いたします。そしてセネガルは本年AU議長国を務めています。そこでアフリカ全体の平和と発展を目的とするTICAD8の成功に向け、議長国セネガルとアフリカ全体を視野にいれながら協力を進めたいと思います。
残念ながらアフリカではセネガルの周辺の地域も含めて紛争が絶えません。TICADが目指す経済発展の前提として平和と安定が確保されなければならず、「平和と安定」はTICAD7の一つの柱と位置づけられています。日本政府はTICAD7から紛争の根本原因への対処を内容とするNAPSAを提唱しています。この地域の安定のため、さらにはアフリカ全体の安定のためにセネガルの果たす役割は重要であり、ダカールフォーラム等、日本政府はセネガル政府の取り組みを高く評価し、必要な支援を行っています。
アフリカからは離れた地域での紛争ですが、今、世界は深刻な危機に直面しています。今この瞬間も多くの貴重な命が奪われています。アフリカにおける自由民主主義の牙城ともいえるセネガルは日本と基本的価値を共有しており、我が国の平和外交にとって貴重なパートナーです。両国は、国際問題の対処に当たって、国連その他の国際条理で緊密に連携をしてきましたが、このような世界的危機に対して、自由と民主主義を守るために更に一層協力しなければならないと思います。
(3) 中長期的な視座に立った協力
私は、自分の任期中、将来を見据えた中長期的観点からも二国間関係を進めたいと考えています。TICAD8の次にはTICAD9の開催が期待されます。2025年には大阪万博が日本で開かれます。そして、2026年にはユースオリンピックがセネガルで開催される予定です。
TICAD9の具体的な開催時期及び開催地については、まだ何も決まっておりませんが、2016年のケニア・ナイロビでのTICAD6以降、TICADは3年ごとに日本とアフリカで交互に開催されていますので、予定通りであれば、TICAD9は2025年の大阪万博と同年に開催されることが見込まれます。大阪万博はアフリカの発展を世界に示す良い機会になるでしょう。多くのアフリカ諸国の参加を得ることによって、大阪万博を「アフリカの万博」とできるよう、皆様と協力して参りたいと思います。この点はサル大統領にもご賛同いただきました。
2026年のユースオリンピックに向けても協力を一層推進していきたいと思います。先般、セネガルにおける空手道場建設計画の文書に署名を行ったところです。また、日本大使館は毎年、セネガル柔道連盟・空手連盟と協力して柔道・空手の大使杯を開催しております。2026年に多くのセネガル選手がメダルを獲得できるよう、引き続きスポーツ協力を促進して参ります。
以上が、着任に当たり皆様に申し上げたかった本使の所信の表明です。
日本を出発する前に以前セネガルに住んだことのある多くの方々にお会いしました。皆さんは今もセネガルが大好きでセネガル時代を懐かしがっていました。私も将来そのような一人になりたいと思います。
冒頭に申し上げたように、私は日セネガル関係の一層の発展のために、セネガルの皆さんと共に歩みたいと思います。皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
「セネガル、日本、ともに歩もう」!!
2022年3月17日
駐セネガル日本国大使
伊澤 修