メールマガジン2025年10月号
令和7年10月8日
【在セネガル日本大使館メールマガジン 2025/10/8 第41号】
◆ 目次 ◆
1 「赤松武駐セネガル日本大使挨拶」
2 「大使館からのお知らせ」
3 「寄稿文」-在セネガル日本国大使館専門調査員・浅香勇貴-
4 「領事便り」
5 「大使館の活動報告」
***********************
1 赤松武駐セネガル日本大使挨拶
在セネガル日本国大使館のメルマガをお読みいただいているみなさまへ、
9月に入ってダカールの外交団も賑やかになってきました。例によって信任状捧呈待ちの大使も増え、近々一気に捧呈式をするのではないか、と言われています。また9月の最初の金曜日はマホメットの誕生日で3連休となりましたが、6日の土曜日の夜中、のんびりネットを見ていたら急にセネガル政府のサイトで「内閣改造」が発表されました。新政権が発足して約一年半。今年の独立記念日前後から噂はあったものの、忘れられかけていた頃の発表、かつわざわざ土曜日の真夜中の改造ということで少し緊張しながら発表を待ちました。
結果は皆様ご案内の通り、主要閣僚では法務、外務両大臣が交代となり、これまでいろいろ関係を築いてきたその他多くの大臣が留任したのは、正直ホッとしました。やはり外交団としては一番関係が深い外務大臣がどうなるのか、発表までの数時間、憶測のメッセージが飛び交いました。
結果は元駐日大使で前国連大使のシェイク・ニャン大使が任命され、今度は新大臣の人となりについて「どんな人か知ってる?」といったメールが飛び交うのはいずこも同じです。
ちなみに新外務大臣とは東京、国連ではほぼすれ違いだったのですが、共通の知り合いも多く、こちらに来てからもお目にかかっていたこともあり、さっそくお祝いのメールを送った次第です。もっとも大臣に就任されてからは、ゆっくりお話しする機会はないのですが、前ファル大臣同様、新大臣とも関係強化に取り組んで行きたいと思います。

連休明けの月曜日、急遽ガンビアから「信任状捧呈式を10日水曜日に行いたい」との連絡があり、ちょうどセネガル航空が運休中だったため、かなり綱渡りでしたが陸路で向かうことにしました。フェリーで渡ったガンビア川は30年以上前に渡ったザイール(コンゴ)河を彷彿とさせ、少し感慨深いものがありました。
ともあれ遠路はるばる車で行ったので、先月のTICADでもお目にかかったニエ外務大臣に少し無理を言って、大臣との面会後直ちにバロウ大統領へ信任状を捧呈するとの段取りをとっていただきました。
同日、公邸がご近所のコードジボワール大使も捧呈式に臨み、その二日後には韓国大使を含む5カ国の大使が捧呈したようです。これでセネガルを含む4カ国の管轄国のうち、3カ国で正式の大使として活動できることになり、少々肩の荷が下りました。
ちなみにコートジボワール大使と前後して行った信任状捧呈の様子はガンビア国営GRTS-TVの夜のニュースで放映され、同放送局のFacebookページ動画でご覧いただけます。https://fb.watch/C226BRWH6H/(動画開始から12分25秒~)
9月もいろいろな方にお目にかかりましたが、中でも「2025年JICA高専オープンイノベーション」で優勝した函館工業高等専門学校の学生チームのみなさんにも公邸にお越しいただき、ダカールで行われた実証実験の中間報告を伺いました。これは当地のCFAOやJICA専門家の協力も得て、魚の鮮度確保を目的とした簡易クーラーボックスを持ち込み、実際にセネガルの海でとった魚で実験するものです。高専オープンイノベーション大会を支える長岡技術科学大学の先生方とは当地およびTICADの場でもお目にかかっていましたが、無事結果が出せたようで何よりです。
さて、しばらく本メルマガを含む広報全体を担当してきた「中の人」が10月に交代します。
いつも「面白い文章を書いてください」とかなり厳しい締め切りを設定してくる彼には「じゃあ、せっかくだから「中の人」として自分で面白い文章書けば?」と挨拶文を依頼しておきましたので是非ご覧ください。
ともあれ、当館のSNSやHPについて何かコメント等あれば引き続きご遠慮なくお知らせください。
そして私は10月終わりから、久しぶりに少し長めの休暇をいただくことになりました。ですので次号(その次も?)は八田次席にお願いすることにしました。
それでは、みなさまどうぞお元気でお過ごしください。
赤松 武
2 大使館からのお知らせ
○2025年10、11月の休館日のお知らせ
10月13日 ◎スポーツの日
11月 3日 ◎文化の日
◎我が国の行政機関の休日
○感染症情報(リフトバレー熱、エムポックス)
現在、セネガルではリフトバレー熱、エムポックスが流行しています。現状や予防法についてこちらに掲載しておりますので、予防に努めるようお願いいたします。
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01242.html
3 寄稿文 「セネガルの将来を展望する」 -在セネガル日本国大使館専門調査員・浅香勇貴-
セネガル大使館の広報・文化班に属している専門調査員の浅香勇貴です。このメールマガジンを編集しています。編集者というのは本来黒子役なので、表舞台に出てくることはありません。しかし、私、今月をもってセネガルを離任することとなっており、最後に自らの媒体に寄稿するよう仰せつかりましたので、セネガル滞在を総括する意味で、セネガルに到着した直後の第一印象をベースとしつつ、私なりにセネガルの将来を見通してみたいと思います。
私は2022年10月末にセネガルに着任したのですが、いくつかの街や村をざっと見渡してみて真っ先に感じ、今でも感じ続けていることは「やたら子どもと若者が多い」ということです。日本的な感覚では限界集落化していそうな辺鄙な村でも「なぜか」10代と覚しき若者や乳幼児がたくさんいる(所在なさそうにしている)。極端なまで若者が不足しており、それが大きな社会経済的な問題を引き起こしている日本とは真逆の世界だと感じました。
2024年7月に公表されたセネガル国勢調査(実施は2023年)の結果を見てみると、総人口は約1,810万人、24歳以下の割合は約60%(日本は20%)、35歳以下に広げれば約75%(同31%)、年齢の中央値はわずか19歳(同49歳)。恐ろしく若い社会(人口ピラミッドでいう富士山型)です。今のセネガルでは20歳でも若くない(逆に日本では48歳でも若い)とみなされそうです。
若年者があふれる社会というのは、年配の方であれば、かつての日本において自分もその一員として見た光景かもしれませんが、今の40代以下であれば見たことのない姿ですし、日本に暮らしている限り、想像しうる将来においてもお目にかかることはできない現実です。という意味で、セネガルには貴重な姿を見せてもらいました。
人口学の理論に、「多産多死」の社会が「多産少死」を経て「少産少死」に向かうとする「人口転換」というものがあります(社会科学には珍しく、ほぼすべての社会に当てはまる普遍的な理論です)。セネガルを含むサブサハラアフリカは、現在、程度の差はありますが、多産少死の段階に突入しており、それ以前の多産多死社会では幼くして命を落としていた多くの乳幼児が、現在では無事に成長するようになっています。こうして若年人口はどんどん増え続け、今後は生産年齢人口(15-64歳)が爆増する「人口ボーナス」期に本格突入します。このボーナス期は一国で一回しか発生せず、先進諸国ではすでに終了、中国でも終了、中南米や東南アジアではあと10年ほどで終了し、残るはインドとアフリカとなっています。こうしてエコノミストたちにより、アフリカは「資本主義最後のフロンティア」として注目されています。
「人口ボーナス」と聞くと、なにかよさそうな響きがありますが、ある社会において若年者が多いというのは諸刃の剣のようなものです。経済成長や新たなイノベーションを起こすダイナミズムを生み出す一方、社会騒擾も引き起こします。1960~70年代の高度経済成長期の日本は若く、生活を一新するような革新的技術が開発されましたが、同時に安保闘争や全共闘運動などの過激な社会運動も引き起こしました。また、歴史上の革命(フランス革命、ロシア革命、イラン革命、アラブの春など)は、人口ピラミッドにおいて若年部分が膨らみを見せる(ユース・バルジyouth bulge)時期に起きたことが知られています。
セネガル・サブサハラアフリカもまさに現在、ユース・バルジ期にあります。膨らみゆく若者が人間らしい生活を送っていけるだけの職に就き、社会の中に包摂されなければ、彼らは自暴自棄になり、社会騒擾を引き起こすことになるでしょう。ユース・バルジが歴史上引き起こしてきた現象としては、軽いもので、国外への大量移住、重いもので、隣国への軍事侵攻、社会革命、クーデタ、要人暗殺を含むテロリズムなどがあります。
アフリカの為政者は、このことを理解しているどころか恐ろしいプレッシャーとして感じているため、どこの国も若者の雇用安定化を最重要の政策アジェンダとして設定しています。そして、それに失敗すれば文字通り「首が飛ぶ」ことになる危険性があることを為政者は痛感しているはずです。
さて、将来の方に目を向けてみると、国連人口部の推計(中位推計)によれば、セネガルの2100年時点での総人口は約4,700万人とされており、2025年現在から75年間で人口が約2.6倍になります(サブサハラアフリカ全体も同じく約2.6倍で33億人)。同じ期間で比較すれば、日本の総人口は約40%減、中国は55%減、韓国58%減、ロシア12%減、東南アジア3%減、米国21%増と予想されているので、セネガルの人口増加スピードが著しいことかがわかります。(と同時に、東アジアが猛スピードで縮小していくのもわかります)。
2100年といえば、かなり先のことに感じるかもしれませんが、今年生まれた赤ちゃんは現在の日本の医療・公衆衛生の水準が維持できればほとんどが生きている年です(私は死んでいます。読者のみなさんとともに)。サブサハラアフリカの現在の赤ちゃんたちの多くも生きているでしょうから、そう遠い未来ではありません。
セネガルは、独立以来一度もクーデタを経験したことがない安定国とみなされています。これから21世紀末にかけて量的にすさまじい社会変化を経験することになるセネガルは、このまま安定国として存在し続けられるのでしょうか。周辺国が不安定化している中、一筋縄では行かないように感じますが、一国の将来は現時点で決まっているものではなく、セネガル人の手で切り開かれていくものです。前途は多難ですが、なんとかこの荒波を乗り越えて、よりよい国を築き上げてほしいものです。短期間ながら自分が関わった思い出の国として、お世話になった同僚やセネガル人の幸福を願いつつ。
在セネガル日本国大使館・専門調査員 浅香勇貴
4 領事便り
○テロ情勢について
7月の、セネガルとの国境沿いのマリ国内の都市ディボリ(Diboli)でのテロ発生以降、中国人やインド人等外国人の誘拐、また、9月には、セネガル東部キディラ(KIDIRA)からマリ国内カイ(KAYES)へと繋がる物流回廊(国道1号線)がテロリストにより封鎖(その他、モーリタニア、コートジボワールとの回廊も封鎖報道)されセネガル人6名を誘拐、その後も輸送車両への襲撃が続く等、マリ国内に限らずセネガルとの国境沿いについても治安情勢が極めて悪化しています。
領事メールを下記の通り適宜発出させていただいておりますが、マリとの国境沿いについては「不要不急の渡航をおやめください」との旨御案内させていただいており今後とも引き続き十分に御注意ください。
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01747.html
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01782.html
5 大使館の活動報告
○赤松大使によるニエ外務・国際協力・在外ガンビア人大臣への信任状の写しの手交
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01784.html
○赤松大使によるバロウ・ガンビア大統領への信任状奉呈
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01786.html
○「初等教育算数能力向上プロジェクトフェーズ2」成果報告セミナーへの参加
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01788.html
----------------------------------------------------------------------
[在セネガル日本大使館メールマガジン]
○本メールマガジンに関する御意見・御要望は以下のメールアドレスあてに送信してください。新規配信登録の御希望もこちらまでお寄せください。
( mailmagazine-sn@dk.mofa.go.jp )
○発行:在セネガル日本大使館
Ambassade du Japon au Senegal
Boulevard Martin Luther King, Dakar, Senegal (B.P. 3140)
TEL :(+221)33.849.55.00
FAX :(+221) 33.849.55.55
X:https://twitter.com/JapanEmbSenegal
FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100078921276471
Instagram:https://www.instagram.com/japanembsenegal/
◆ 目次 ◆
1 「赤松武駐セネガル日本大使挨拶」
2 「大使館からのお知らせ」
3 「寄稿文」-在セネガル日本国大使館専門調査員・浅香勇貴-
4 「領事便り」
5 「大使館の活動報告」
***********************
1 赤松武駐セネガル日本大使挨拶
在セネガル日本国大使館のメルマガをお読みいただいているみなさまへ、
9月に入ってダカールの外交団も賑やかになってきました。例によって信任状捧呈待ちの大使も増え、近々一気に捧呈式をするのではないか、と言われています。また9月の最初の金曜日はマホメットの誕生日で3連休となりましたが、6日の土曜日の夜中、のんびりネットを見ていたら急にセネガル政府のサイトで「内閣改造」が発表されました。新政権が発足して約一年半。今年の独立記念日前後から噂はあったものの、忘れられかけていた頃の発表、かつわざわざ土曜日の真夜中の改造ということで少し緊張しながら発表を待ちました。
結果は皆様ご案内の通り、主要閣僚では法務、外務両大臣が交代となり、これまでいろいろ関係を築いてきたその他多くの大臣が留任したのは、正直ホッとしました。やはり外交団としては一番関係が深い外務大臣がどうなるのか、発表までの数時間、憶測のメッセージが飛び交いました。
結果は元駐日大使で前国連大使のシェイク・ニャン大使が任命され、今度は新大臣の人となりについて「どんな人か知ってる?」といったメールが飛び交うのはいずこも同じです。
ちなみに新外務大臣とは東京、国連ではほぼすれ違いだったのですが、共通の知り合いも多く、こちらに来てからもお目にかかっていたこともあり、さっそくお祝いのメールを送った次第です。もっとも大臣に就任されてからは、ゆっくりお話しする機会はないのですが、前ファル大臣同様、新大臣とも関係強化に取り組んで行きたいと思います。

連休明けの月曜日、急遽ガンビアから「信任状捧呈式を10日水曜日に行いたい」との連絡があり、ちょうどセネガル航空が運休中だったため、かなり綱渡りでしたが陸路で向かうことにしました。フェリーで渡ったガンビア川は30年以上前に渡ったザイール(コンゴ)河を彷彿とさせ、少し感慨深いものがありました。
ともあれ遠路はるばる車で行ったので、先月のTICADでもお目にかかったニエ外務大臣に少し無理を言って、大臣との面会後直ちにバロウ大統領へ信任状を捧呈するとの段取りをとっていただきました。
同日、公邸がご近所のコードジボワール大使も捧呈式に臨み、その二日後には韓国大使を含む5カ国の大使が捧呈したようです。これでセネガルを含む4カ国の管轄国のうち、3カ国で正式の大使として活動できることになり、少々肩の荷が下りました。
ちなみにコートジボワール大使と前後して行った信任状捧呈の様子はガンビア国営GRTS-TVの夜のニュースで放映され、同放送局のFacebookページ動画でご覧いただけます。https://fb.watch/C226BRWH6H/(動画開始から12分25秒~)
9月もいろいろな方にお目にかかりましたが、中でも「2025年JICA高専オープンイノベーション」で優勝した函館工業高等専門学校の学生チームのみなさんにも公邸にお越しいただき、ダカールで行われた実証実験の中間報告を伺いました。これは当地のCFAOやJICA専門家の協力も得て、魚の鮮度確保を目的とした簡易クーラーボックスを持ち込み、実際にセネガルの海でとった魚で実験するものです。高専オープンイノベーション大会を支える長岡技術科学大学の先生方とは当地およびTICADの場でもお目にかかっていましたが、無事結果が出せたようで何よりです。
さて、しばらく本メルマガを含む広報全体を担当してきた「中の人」が10月に交代します。
いつも「面白い文章を書いてください」とかなり厳しい締め切りを設定してくる彼には「じゃあ、せっかくだから「中の人」として自分で面白い文章書けば?」と挨拶文を依頼しておきましたので是非ご覧ください。
ともあれ、当館のSNSやHPについて何かコメント等あれば引き続きご遠慮なくお知らせください。
そして私は10月終わりから、久しぶりに少し長めの休暇をいただくことになりました。ですので次号(その次も?)は八田次席にお願いすることにしました。
それでは、みなさまどうぞお元気でお過ごしください。
赤松 武
2 大使館からのお知らせ
○2025年10、11月の休館日のお知らせ
10月13日 ◎スポーツの日
11月 3日 ◎文化の日
◎我が国の行政機関の休日
○感染症情報(リフトバレー熱、エムポックス)
現在、セネガルではリフトバレー熱、エムポックスが流行しています。現状や予防法についてこちらに掲載しておりますので、予防に努めるようお願いいたします。
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01242.html
3 寄稿文 「セネガルの将来を展望する」 -在セネガル日本国大使館専門調査員・浅香勇貴-
セネガル大使館の広報・文化班に属している専門調査員の浅香勇貴です。このメールマガジンを編集しています。編集者というのは本来黒子役なので、表舞台に出てくることはありません。しかし、私、今月をもってセネガルを離任することとなっており、最後に自らの媒体に寄稿するよう仰せつかりましたので、セネガル滞在を総括する意味で、セネガルに到着した直後の第一印象をベースとしつつ、私なりにセネガルの将来を見通してみたいと思います。
私は2022年10月末にセネガルに着任したのですが、いくつかの街や村をざっと見渡してみて真っ先に感じ、今でも感じ続けていることは「やたら子どもと若者が多い」ということです。日本的な感覚では限界集落化していそうな辺鄙な村でも「なぜか」10代と覚しき若者や乳幼児がたくさんいる(所在なさそうにしている)。極端なまで若者が不足しており、それが大きな社会経済的な問題を引き起こしている日本とは真逆の世界だと感じました。
2024年7月に公表されたセネガル国勢調査(実施は2023年)の結果を見てみると、総人口は約1,810万人、24歳以下の割合は約60%(日本は20%)、35歳以下に広げれば約75%(同31%)、年齢の中央値はわずか19歳(同49歳)。恐ろしく若い社会(人口ピラミッドでいう富士山型)です。今のセネガルでは20歳でも若くない(逆に日本では48歳でも若い)とみなされそうです。
若年者があふれる社会というのは、年配の方であれば、かつての日本において自分もその一員として見た光景かもしれませんが、今の40代以下であれば見たことのない姿ですし、日本に暮らしている限り、想像しうる将来においてもお目にかかることはできない現実です。という意味で、セネガルには貴重な姿を見せてもらいました。
人口学の理論に、「多産多死」の社会が「多産少死」を経て「少産少死」に向かうとする「人口転換」というものがあります(社会科学には珍しく、ほぼすべての社会に当てはまる普遍的な理論です)。セネガルを含むサブサハラアフリカは、現在、程度の差はありますが、多産少死の段階に突入しており、それ以前の多産多死社会では幼くして命を落としていた多くの乳幼児が、現在では無事に成長するようになっています。こうして若年人口はどんどん増え続け、今後は生産年齢人口(15-64歳)が爆増する「人口ボーナス」期に本格突入します。このボーナス期は一国で一回しか発生せず、先進諸国ではすでに終了、中国でも終了、中南米や東南アジアではあと10年ほどで終了し、残るはインドとアフリカとなっています。こうしてエコノミストたちにより、アフリカは「資本主義最後のフロンティア」として注目されています。
「人口ボーナス」と聞くと、なにかよさそうな響きがありますが、ある社会において若年者が多いというのは諸刃の剣のようなものです。経済成長や新たなイノベーションを起こすダイナミズムを生み出す一方、社会騒擾も引き起こします。1960~70年代の高度経済成長期の日本は若く、生活を一新するような革新的技術が開発されましたが、同時に安保闘争や全共闘運動などの過激な社会運動も引き起こしました。また、歴史上の革命(フランス革命、ロシア革命、イラン革命、アラブの春など)は、人口ピラミッドにおいて若年部分が膨らみを見せる(ユース・バルジyouth bulge)時期に起きたことが知られています。
セネガル・サブサハラアフリカもまさに現在、ユース・バルジ期にあります。膨らみゆく若者が人間らしい生活を送っていけるだけの職に就き、社会の中に包摂されなければ、彼らは自暴自棄になり、社会騒擾を引き起こすことになるでしょう。ユース・バルジが歴史上引き起こしてきた現象としては、軽いもので、国外への大量移住、重いもので、隣国への軍事侵攻、社会革命、クーデタ、要人暗殺を含むテロリズムなどがあります。
アフリカの為政者は、このことを理解しているどころか恐ろしいプレッシャーとして感じているため、どこの国も若者の雇用安定化を最重要の政策アジェンダとして設定しています。そして、それに失敗すれば文字通り「首が飛ぶ」ことになる危険性があることを為政者は痛感しているはずです。
さて、将来の方に目を向けてみると、国連人口部の推計(中位推計)によれば、セネガルの2100年時点での総人口は約4,700万人とされており、2025年現在から75年間で人口が約2.6倍になります(サブサハラアフリカ全体も同じく約2.6倍で33億人)。同じ期間で比較すれば、日本の総人口は約40%減、中国は55%減、韓国58%減、ロシア12%減、東南アジア3%減、米国21%増と予想されているので、セネガルの人口増加スピードが著しいことかがわかります。(と同時に、東アジアが猛スピードで縮小していくのもわかります)。
2100年といえば、かなり先のことに感じるかもしれませんが、今年生まれた赤ちゃんは現在の日本の医療・公衆衛生の水準が維持できればほとんどが生きている年です(私は死んでいます。読者のみなさんとともに)。サブサハラアフリカの現在の赤ちゃんたちの多くも生きているでしょうから、そう遠い未来ではありません。
セネガルは、独立以来一度もクーデタを経験したことがない安定国とみなされています。これから21世紀末にかけて量的にすさまじい社会変化を経験することになるセネガルは、このまま安定国として存在し続けられるのでしょうか。周辺国が不安定化している中、一筋縄では行かないように感じますが、一国の将来は現時点で決まっているものではなく、セネガル人の手で切り開かれていくものです。前途は多難ですが、なんとかこの荒波を乗り越えて、よりよい国を築き上げてほしいものです。短期間ながら自分が関わった思い出の国として、お世話になった同僚やセネガル人の幸福を願いつつ。
在セネガル日本国大使館・専門調査員 浅香勇貴
4 領事便り
○テロ情勢について
7月の、セネガルとの国境沿いのマリ国内の都市ディボリ(Diboli)でのテロ発生以降、中国人やインド人等外国人の誘拐、また、9月には、セネガル東部キディラ(KIDIRA)からマリ国内カイ(KAYES)へと繋がる物流回廊(国道1号線)がテロリストにより封鎖(その他、モーリタニア、コートジボワールとの回廊も封鎖報道)されセネガル人6名を誘拐、その後も輸送車両への襲撃が続く等、マリ国内に限らずセネガルとの国境沿いについても治安情勢が極めて悪化しています。
領事メールを下記の通り適宜発出させていただいておりますが、マリとの国境沿いについては「不要不急の渡航をおやめください」との旨御案内させていただいており今後とも引き続き十分に御注意ください。
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01747.html
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01782.html
5 大使館の活動報告
○赤松大使によるニエ外務・国際協力・在外ガンビア人大臣への信任状の写しの手交
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01784.html
○赤松大使によるバロウ・ガンビア大統領への信任状奉呈
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01786.html
○「初等教育算数能力向上プロジェクトフェーズ2」成果報告セミナーへの参加
https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01788.html
----------------------------------------------------------------------
[在セネガル日本大使館メールマガジン]
○本メールマガジンに関する御意見・御要望は以下のメールアドレスあてに送信してください。新規配信登録の御希望もこちらまでお寄せください。
( mailmagazine-sn@dk.mofa.go.jp )
○発行:在セネガル日本大使館
Ambassade du Japon au Senegal
Boulevard Martin Luther King, Dakar, Senegal (B.P. 3140)
TEL :(+221)33.849.55.00
FAX :(+221) 33.849.55.55
X:https://twitter.com/JapanEmbSenegal
FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100078921276471
Instagram:https://www.instagram.com/japanembsenegal/