メールマガジン2023年7月号
令和5年7月7日
【在セネガル日本大使館メールマガジン 2023/7/7 第14号】
◆ 目次 ◆
1 「広瀬真一臨時代理大使挨拶」
2 「大使館からのお知らせ」
3 「寄稿文」
4 「領事便り」
5 「政治・経済」
6 「広報・文化便り」
***********************
1 広瀬真一臨時代理大使挨拶
7月は伊澤大使が休暇で一時帰国中のため、本号では私からご挨拶申し上げます。
7月3日(月)朝は濃い灰色の雲がたれこめる中、車で事務所に向かう途中でかなり激しい雨が降り出しました。雨は短時間で止みましたが、雨季が始まっていることを実感しました。雨が降ると砂埃の多い当地の道路は滑りやすくなり、交通事故が多発しますので運転の際は十分お気を付けください。
私は昨年10月下旬に丁度前回の離任から30年ぶりにセネガルに再赴任しました。前回はフランスで2年間研修生活を送った後1990年7月に最初の在外勤務地として着任しました。当時一緒に仕事をした当館現地職員の内2名が勤続していて再会でき、再び一緒に仕事をしています。私生活でも当時家事をお願いしていた女中さんを再び雇うことができました。彼女が時々腰に負ぶって連れてきた幼い息子は34歳になり、今年の犠牲祭後に結婚する予定の由でした。当時の大使館はプラトー地区の独立広場を市庁舎・港の方向に少し下って右折した集合ビルの3フロアに入居していました。大使館が現在のコルニッシュ沿いの独立施設に移転したのは、私が離任して3年後の1995年ということです。かつて住んだ大使館からほど近いアパートは大分見かけが老朽化しましたが現在も残っています。当時の当館は近隣5か国マリ、モーリタニア、ガンビア、ギニアビサウ、カーボベルデを兼轄していましたが、その後国の規模が大きいマリとモーリタニアには大使館が開設され、現在は残りの3か国を兼轄しています。当時は日本のODA拡大期で、JICAの専門家、青年海外協力隊、経済協力プロジェクト関係者、総合商社各社の事務所長及びそれぞれのご家族等で多くの日本人が住んでいました。私の離任直前には大使の交代があり、新大使も若い頃セネガルに在勤したということで、着任の辞では、この国は最初の勤務時から殆ど何も変わっていない!との印象を述べていました。ともあれ、セネガルは民主主義の定着した政治や社会が安定した国であることを実感しつつ私の最初の在勤を終えました。果たして30年ぶりに戻ると、大きな新空港、高速道路に目を見張り、高速道路から見える巨大なスタジアムや建設ラッシュ、ダカール市内でも新しいオフィスビルやマンションビルがいくつも立ち、またあちこちで建設中の様子を目の当たりにし、今やセネガルは名実ともに成長著しい西アフリカのリーダー国であることを納得し、かつてのアフリカ在勤地の発展ぶりに感慨ひとしおでした。
ところが、この民主主義の定着した平和なはずのセネガルで大変残念な暴動が発生しました。5月から野党PASTEFソンコ党首の裁判をめぐり抗議活動が活発化していましたが、6月1日に判決が下されると、ダカール周辺でも治安当局との衝突・投石、車両放火、スーパー・銀行・店舗への破壊・略奪が発生し、ダカール大学でも校舎やスクールバスが放火され炎上しました。この騒擾により、銀行店舗31か所、ガソリンスタンド100軒超、仏系スーパーAuchan7店舗、通信Orange営業所・キオスク300か所の物的損害・略奪、閉鎖による従業員の一時停職、ホテル客の引き上げ、ネット通信の制限による経済活動への損害、その他甚大な被害が出ました。この事態にAU、ECOWAS、EU等がコミュニケを発出し、暴力行為を非難すると共に、セネガルの民主主義の伝統や平和・安定の名声を維持するよう求めました。旧宗主国のフランスも、暴力の自制とセネガル伝統の民主主義下での解決を求めました。
その後も何度か抗議デモの呼び掛けが出ましたが、当局によるデモ不許可は尊重され治安情勢は落ち着いています。幸いにも6月18日(日)には市街Espace Tramesの会場で日本ポップカルチャー紹介イベントが開催され、午前11時時点で来場者800人、若者を中心に延べ約1500人の来場がありました。伊澤大使は、着任してから最大の人出の日本文化イベントとなり、当地若者間での日本のアニメ人気に驚いたとして、マンガ・アニメの浸透ぶりや影響力に手ごたえを感じました。
上記のように、セネガルでの暴動に対し暴力の自制を求めたフランスですが、6月27日フランスでの警察官による少年射殺事件に伴う暴動がその後同国各地でエスカレートし、在仏日本大使館領事部でも連日領事メールを発出して注意を呼びかける事態となりました。少年射殺事件への抗議に端を発し、いつしか見境のない破壊活動から暴動へと拡大し、治安当局も抑えることができなくなってしまいます。こうした暴動は日本では見られないため我々日本人には抗議行動から暴動への展開理由やメカニズムが理解しにくいです。セネガルの暴動とフランスの暴動は発端も社会背景も全く別物ですが、セネガルの直後に発生したフランスでの事態は、抗議行動が暴動へと拡大展開する仕組みを理解する上で参考にはなるのではないでしょうか。
政治的安定と民主主義が定着した西アフリカのリーダー国でありテランガ(おもてなし)の国民性をアピールするセネガルには今後先般のような事態が発生しないように求めたいです。なお、在留邦人の皆様にはデモや集会、騒動が生じている場所には絶対に近づかないように重ねてお願いします。
2 大使館からのお知らせ
○2023年7月、8月の休館日のお知らせ
7月28日(金) イスラム新年(変更の可能性あり)
8月15日(火) 聖母昇天祭
3 寄稿 一般社団法人WITH PEER 松尾雄大代表理事
(1)はじめに
皆様、初めまして。一般社団法人WITH PEER代表理事の松尾雄大と申します。
在セネガル日本国大使館のメールマガジンをお読みの皆様に対して貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。セネガルと日本の外交や交流に寄与されてきた錚々たる皆様に続いて寄稿するのは大変恐縮ではございますが、私たちのスポーツを通じたセネガルの「障害」課題への取り組みついてお伝えできればと存じます。文章中に”PEER”という言葉を多用いたしますが、「障害課題を共に解決する仲間」を指します。
弊会は、PEERと共に「障害インクルーシブ」な社会の実現のため活動しており、その核となっているのはスポーツです。セネガルの社会が生み出す「障害」課題解決に挑む私たちの話に3分お時間いただけますと幸いです。
(2)セネガルにいる経緯
「日本に住んでいるから英語はいらない。」
かつての私に赤面の至りではありますが、英語嫌いな学生の常套句を使う一人でした。大学は教育学部で小学校の教員免許を取得しましたが、今では日本から遠く離れたセネガルでウォロフ語とフランス語を駆使し、セネガル人と共に活動しているとは、学生時代の私はきっと信じないでしょう。今年31歳になりますが、人間ここまで変わるとは驚きです。
海外嫌いだった私が学生時代にテレビで見たウユニ塩湖に心を奪われ、大学を1年休学してバックパッカーとして世界一周しました。多様な文化や人、価値観に触れると共に世界の現状を目にして、海外への想いが芽生えたことを記憶しています。大学卒業後は、JICAのボランティア事業である「JICA海外協力隊」に小学校教育の職種で参加し、セネガルの田舎町ンドファンで日本人1人の2年間を過ごしました。
さて、人生の転機は隊員だった2018年5月に訪れました。当時、JICA「スポーツと開発」事業の一環で、日本ブラインドサッカー協会の協力の下で「スポーツを通じたダイバーシティ教育プログラム」がセネガルで実施されました。日本からは視覚障害者であるブラインドサッカー女子日本代表選手がセネガルを訪れました。私はそのプログラムの一環で実施された隊員企画イベントでリーダーになりました。しかし、当時の私は恥ずかしながらブラインドサッカーをはじめとするパラスポーツに関して無知で、障害者と接する機会を積極的に持たない人間でした。
イベント当日、初めてブラインドサッカーを見るセネガルの子どもたちの驚きの表情は今でも脳裏に残っています。「目が見えない人=何もできない人と思っていたのに、目の前にいる視覚障害者はまるで見えているかのようにボールを扱っている。」この強烈な経験により、今までの価値観が覆され、最初は困惑していた子どもたちは次第に目を輝かせるようになりました。そして何より、私自身の「障害」観にパラダイムシフトが起きたのは言うまでもありません。そして、このプログラムを通じて、私は人生で初めてセネガルの障害者の友人を得ました。この原体験こそ私が今でもセネガルで活動する原点です。スポーツの力に衝撃を受けた瞬間でもあり、社会が生み出す障害によって生きづらさを感じている障害者の問題が私自身の関心事になりました。
(3)団体の始まりと活動紹介
2018年9月に帰国後、日本ブラインドサッカー協会で働き、ブラインドサッカーチームに所属して全国大会にも選手として参加しました。これらの経験は、すべて将来的にセネガルで視覚障害の友人のためにスポーツを通じた活動をするための準備でした。そして、2020年に任意団体「WITH PEER」として活動を開始し、2022年秋に一般社団法人として活動を加速させることにしました。
WITH PEERは、PEER(「障害」課題を解決する仲間)と共に「障害インクルーシブ」な社会の実現を目指す団体です。現在は主にティエス市を活動地域にして、「スポーツをきっかけに障害課題に取り組む人的資本の強化」と「スポーツを通じて社会と障害者の繋がりを支える地域共生コミュニティ開発」に取り組んでおります。スポーツは、障害の有無に関係なく人と人とが繋がるきっかけ・ツールであり、そこからどのような空間・コミュニティを形成していけるかが重要であると考えています。セネガル視覚障害者スポーツ連盟、ティエス州障害者スポーツ協会、インクルーシブ教育推進団体、スペシャルオリンピクスや各障害者種別関連団体とも連携をしながら、人材育成・コミュニティ開発を行なっております。
(4)最後に
私たちは、「障害インクルーシブ」な社会実現のためには、PEER(「障害」課題を解決する仲間)の輪が拡大することが鍵だと考えています。私たちは、その輪を広げていくために、ブラインドサッカーやボッチャなどに取り組んでいます。特にボッチャは性別、障害の有無、年齢によらず幅広い人々を「楽しい」でつなぐ力があります。実際にやってみたいというご要望がありましたら、みなさんの職場、学校、活動先にボッチャセットと現地障害当事者と共に伺います。また、ティエスにお越しの際は、ぜひお声がけください。皆様がPEERとなり、ありのままに生きられる「障害なき世界」を共創する仲間となることを願っております。
4 領事便り
○公邸プール開きの開催
6月17日、伊澤大使は、在留邦人の福利厚生充実の一環で、補習授業校の子どもたちに公邸のプール開きを実施しました。
(当日の様子)
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02McGHzPRAs4ArTRWoKSpMW87ZFw7uHwfjgfBrPpuZyrHRb8qnwhdV9J2twScM4C7tl&id=100078921276471
<在留届の届出、たびレジの登録>
○災害や騒乱等が発生した際、ご家族、ご友人、同僚を守るため、一人でも多くの方に安全対策に関する情報が届くよう、在留届(3か月以降の滞在)の届出、又は「たびレジ(3か月未満の滞在)」の登録を、お知り合いの方や出張者・旅行者にご案内いただけますようお願いいたします。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/simpleAgree.html
5 政治・経済
○伊澤大使のバ最高裁判所長官の表敬
6月6日、伊澤大使は最高裁判所のバ長官を表敬し、今日のセネガル内政における司法の役割や宗教と法律との関係について意見交換をしました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01210.html
○日本企業関係者等との連絡会の開催
6月13日、大使公邸にて日本企業関係者等との連絡会が開催され、日セネガル経済関係等について意見交換が行われました。同連絡会にはジュフ官房長が出席しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01201.html
○日セネガルODA政策協議の開催
6月15日、ダカール市内ホテルにて日セネガルODA政策協議が開催されました。これまでの日本の開発協力案件のレビューや改善点等を踏まえ、今後の協力の方向性等について議論されました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01204.html
○令和5年度対セネガル無償資金協力「人材育成奨学計画」交換公文の署名と交換
6月15日、伊澤修駐セネガル日本国大使及びウリマタ・サール経済・計画・協力大臣との間で、令和5年度対セネガル無償資金協力「人材育成奨学計画」に関する署名と交換が行われました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01205.html
○令和5年度春の叙勲:コル・セック国務大臣への旭日重光章伝達式の実施
6月22日、日本大使公邸にて、伊澤大使は、セネガルのアワ・マリー・コル・セック国務大臣(採取産業透明性イニシアティブ(EITI)セネガル国家委員長、野口英世アフリカ賞選考委員、元保健・社会活動大臣)への旭日重光章(令和5年度春外国人叙勲)の伝達式を行いました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01212.html
○サル大統領の次期大統領選不出馬
7月3日、サル大統領は国民向けの演説を行い、2024年2月25日に予定されている大統領選挙に三選出馬しない意志を表明しました。同演説で、大統領は、6月頭のデモによる多数の犠牲者や被害の発生について言及し、暴動を批判するとともに、国民に向け、民主主義の価値観や法の支配を遵守するよう呼びかけました。
○当館が所掌する4か国(セネガル、カーボベルデ、ガンビア、ギニアビサウ)の政治経済関連の一般情報は、毎月上旬に当館のHP「セネガル基礎情報」及び「新着情報」に「在セネガル大使館月例報告」として掲載しております。ご関心のある方は以下のリンクをご参照ください。
(参考)月例報告:https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01078.html
6 広報・文化便り
○第17回日本国際漫画賞の作品募集
概要は以下リンクのとおりですので、応募条件を満たす方でご関心のある方はぜひ応募ください。締切りは7月7日の予定でしたが、7月12日に延長されました。
(概要)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01149.html
○日本ポップカルチャー紹介イベントMatsuriへの参加
6月18日、当地文化施設Espace Tramesで日本ポップカルチャー紹介イベント「Matsuri」が開催され、当館も出展しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01208.html
○伊澤大使のラストル事業共同組合・青少年省・CESAGとの署名式への参加
6月19日、伊澤大使は、当国からセネガル人実習生を派遣するラストル協同組合、青少年・起業・雇用省、及びアフリカ高等経営学センターとの事業署名式に参加しました。
(当日の様子)https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02MErmXRrF4n3QhYqXmjf2HzpR7uNB73AYDkoHpqNJnYhK7enuMiNxY6ayZWDJLz2pl&id=100078921276471
○現地メディア向けプレスツアーでのNGOムラのミライの事業視察
6月20日、当館は現地メディア向けプレスツアーを開催し、プレス一行と伊澤大使は日本のNGO「ムラのミライ」が循環型農業の開発事業を行うンブール県ンゲニエーヌ行政村を訪問しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01217.html
○Instagramの開始
当館は、現在実施しているTwitterとFacebookに加え、新たにInstagramを始めました。ぜひご覧ください。
Instagram:https://www.instagram.com/japanembsenegal/
○当館では、日本関連行事に関する情報を随時募集しております。皆様ご自身が実施される日本関連行事のほか、知り合いの方のご活動等についての情報を( mailmagazine-sn@dk.mofa.go.jp )までお知らせください。毎月末までに原稿をいただければ翌月のメールマガジンに掲載することができます。当館HPやSNSへの掲載は随時行います。
○当館のSNSアカウントは以下のとおりです。日・セネガル関係強化のため、是非ご関心のある投稿のRTやシェア等、皆さまのご協力をお願いいたします。
TW:https://twitter.com/JapanEmbSenegal
FB:https://www.facebook.com/profile.php?id=100078921276471
Instagram:https://www.instagram.com/japanembsenegal/
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[在セネガル日本大使館メールマガジン]
○本メールマガジンに関するご意見・ご要望は以下のメールアドレスあてに送信してください。新規配信登録のご希望もこちらまでお寄せください。
( mailmagazine-sn@dk.mofa.go.jp )
○参考ホームページ
首相官邸ホームページ ( www.kantei.go.jp )
外務省ホームページ ( www.mofa.go.jp/mofaj/ )
当館ホームページ(https://www.sn.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html )
当館Twitter ( https://twitter.com/JapanEmbSenegal )
当館Facebook( https://www.facebook.com/profile.php?id=100078921276471 )
当館Instagram ( https://www.instagram.com/japanembsenegal/ )
○発行:在セネガル日本大使館
Ambassade du Japon au Senegal
Boulevard Martin Luther King, Dakar, Senegal (B.P. 3140)
TEL :(+221)33.849.55.00
FAX :(+221) 33.849.55.55
◆ 目次 ◆
1 「広瀬真一臨時代理大使挨拶」
2 「大使館からのお知らせ」
3 「寄稿文」
4 「領事便り」
5 「政治・経済」
6 「広報・文化便り」
***********************
1 広瀬真一臨時代理大使挨拶
7月は伊澤大使が休暇で一時帰国中のため、本号では私からご挨拶申し上げます。
7月3日(月)朝は濃い灰色の雲がたれこめる中、車で事務所に向かう途中でかなり激しい雨が降り出しました。雨は短時間で止みましたが、雨季が始まっていることを実感しました。雨が降ると砂埃の多い当地の道路は滑りやすくなり、交通事故が多発しますので運転の際は十分お気を付けください。
私は昨年10月下旬に丁度前回の離任から30年ぶりにセネガルに再赴任しました。前回はフランスで2年間研修生活を送った後1990年7月に最初の在外勤務地として着任しました。当時一緒に仕事をした当館現地職員の内2名が勤続していて再会でき、再び一緒に仕事をしています。私生活でも当時家事をお願いしていた女中さんを再び雇うことができました。彼女が時々腰に負ぶって連れてきた幼い息子は34歳になり、今年の犠牲祭後に結婚する予定の由でした。当時の大使館はプラトー地区の独立広場を市庁舎・港の方向に少し下って右折した集合ビルの3フロアに入居していました。大使館が現在のコルニッシュ沿いの独立施設に移転したのは、私が離任して3年後の1995年ということです。かつて住んだ大使館からほど近いアパートは大分見かけが老朽化しましたが現在も残っています。当時の当館は近隣5か国マリ、モーリタニア、ガンビア、ギニアビサウ、カーボベルデを兼轄していましたが、その後国の規模が大きいマリとモーリタニアには大使館が開設され、現在は残りの3か国を兼轄しています。当時は日本のODA拡大期で、JICAの専門家、青年海外協力隊、経済協力プロジェクト関係者、総合商社各社の事務所長及びそれぞれのご家族等で多くの日本人が住んでいました。私の離任直前には大使の交代があり、新大使も若い頃セネガルに在勤したということで、着任の辞では、この国は最初の勤務時から殆ど何も変わっていない!との印象を述べていました。ともあれ、セネガルは民主主義の定着した政治や社会が安定した国であることを実感しつつ私の最初の在勤を終えました。果たして30年ぶりに戻ると、大きな新空港、高速道路に目を見張り、高速道路から見える巨大なスタジアムや建設ラッシュ、ダカール市内でも新しいオフィスビルやマンションビルがいくつも立ち、またあちこちで建設中の様子を目の当たりにし、今やセネガルは名実ともに成長著しい西アフリカのリーダー国であることを納得し、かつてのアフリカ在勤地の発展ぶりに感慨ひとしおでした。
ところが、この民主主義の定着した平和なはずのセネガルで大変残念な暴動が発生しました。5月から野党PASTEFソンコ党首の裁判をめぐり抗議活動が活発化していましたが、6月1日に判決が下されると、ダカール周辺でも治安当局との衝突・投石、車両放火、スーパー・銀行・店舗への破壊・略奪が発生し、ダカール大学でも校舎やスクールバスが放火され炎上しました。この騒擾により、銀行店舗31か所、ガソリンスタンド100軒超、仏系スーパーAuchan7店舗、通信Orange営業所・キオスク300か所の物的損害・略奪、閉鎖による従業員の一時停職、ホテル客の引き上げ、ネット通信の制限による経済活動への損害、その他甚大な被害が出ました。この事態にAU、ECOWAS、EU等がコミュニケを発出し、暴力行為を非難すると共に、セネガルの民主主義の伝統や平和・安定の名声を維持するよう求めました。旧宗主国のフランスも、暴力の自制とセネガル伝統の民主主義下での解決を求めました。
その後も何度か抗議デモの呼び掛けが出ましたが、当局によるデモ不許可は尊重され治安情勢は落ち着いています。幸いにも6月18日(日)には市街Espace Tramesの会場で日本ポップカルチャー紹介イベントが開催され、午前11時時点で来場者800人、若者を中心に延べ約1500人の来場がありました。伊澤大使は、着任してから最大の人出の日本文化イベントとなり、当地若者間での日本のアニメ人気に驚いたとして、マンガ・アニメの浸透ぶりや影響力に手ごたえを感じました。
上記のように、セネガルでの暴動に対し暴力の自制を求めたフランスですが、6月27日フランスでの警察官による少年射殺事件に伴う暴動がその後同国各地でエスカレートし、在仏日本大使館領事部でも連日領事メールを発出して注意を呼びかける事態となりました。少年射殺事件への抗議に端を発し、いつしか見境のない破壊活動から暴動へと拡大し、治安当局も抑えることができなくなってしまいます。こうした暴動は日本では見られないため我々日本人には抗議行動から暴動への展開理由やメカニズムが理解しにくいです。セネガルの暴動とフランスの暴動は発端も社会背景も全く別物ですが、セネガルの直後に発生したフランスでの事態は、抗議行動が暴動へと拡大展開する仕組みを理解する上で参考にはなるのではないでしょうか。
政治的安定と民主主義が定着した西アフリカのリーダー国でありテランガ(おもてなし)の国民性をアピールするセネガルには今後先般のような事態が発生しないように求めたいです。なお、在留邦人の皆様にはデモや集会、騒動が生じている場所には絶対に近づかないように重ねてお願いします。
2 大使館からのお知らせ
○2023年7月、8月の休館日のお知らせ
7月28日(金) イスラム新年(変更の可能性あり)
8月15日(火) 聖母昇天祭
3 寄稿 一般社団法人WITH PEER 松尾雄大代表理事
(1)はじめに
皆様、初めまして。一般社団法人WITH PEER代表理事の松尾雄大と申します。
在セネガル日本国大使館のメールマガジンをお読みの皆様に対して貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。セネガルと日本の外交や交流に寄与されてきた錚々たる皆様に続いて寄稿するのは大変恐縮ではございますが、私たちのスポーツを通じたセネガルの「障害」課題への取り組みついてお伝えできればと存じます。文章中に”PEER”という言葉を多用いたしますが、「障害課題を共に解決する仲間」を指します。
弊会は、PEERと共に「障害インクルーシブ」な社会の実現のため活動しており、その核となっているのはスポーツです。セネガルの社会が生み出す「障害」課題解決に挑む私たちの話に3分お時間いただけますと幸いです。
(2)セネガルにいる経緯
「日本に住んでいるから英語はいらない。」
かつての私に赤面の至りではありますが、英語嫌いな学生の常套句を使う一人でした。大学は教育学部で小学校の教員免許を取得しましたが、今では日本から遠く離れたセネガルでウォロフ語とフランス語を駆使し、セネガル人と共に活動しているとは、学生時代の私はきっと信じないでしょう。今年31歳になりますが、人間ここまで変わるとは驚きです。
海外嫌いだった私が学生時代にテレビで見たウユニ塩湖に心を奪われ、大学を1年休学してバックパッカーとして世界一周しました。多様な文化や人、価値観に触れると共に世界の現状を目にして、海外への想いが芽生えたことを記憶しています。大学卒業後は、JICAのボランティア事業である「JICA海外協力隊」に小学校教育の職種で参加し、セネガルの田舎町ンドファンで日本人1人の2年間を過ごしました。
さて、人生の転機は隊員だった2018年5月に訪れました。当時、JICA「スポーツと開発」事業の一環で、日本ブラインドサッカー協会の協力の下で「スポーツを通じたダイバーシティ教育プログラム」がセネガルで実施されました。日本からは視覚障害者であるブラインドサッカー女子日本代表選手がセネガルを訪れました。私はそのプログラムの一環で実施された隊員企画イベントでリーダーになりました。しかし、当時の私は恥ずかしながらブラインドサッカーをはじめとするパラスポーツに関して無知で、障害者と接する機会を積極的に持たない人間でした。
イベント当日、初めてブラインドサッカーを見るセネガルの子どもたちの驚きの表情は今でも脳裏に残っています。「目が見えない人=何もできない人と思っていたのに、目の前にいる視覚障害者はまるで見えているかのようにボールを扱っている。」この強烈な経験により、今までの価値観が覆され、最初は困惑していた子どもたちは次第に目を輝かせるようになりました。そして何より、私自身の「障害」観にパラダイムシフトが起きたのは言うまでもありません。そして、このプログラムを通じて、私は人生で初めてセネガルの障害者の友人を得ました。この原体験こそ私が今でもセネガルで活動する原点です。スポーツの力に衝撃を受けた瞬間でもあり、社会が生み出す障害によって生きづらさを感じている障害者の問題が私自身の関心事になりました。
(3)団体の始まりと活動紹介
2018年9月に帰国後、日本ブラインドサッカー協会で働き、ブラインドサッカーチームに所属して全国大会にも選手として参加しました。これらの経験は、すべて将来的にセネガルで視覚障害の友人のためにスポーツを通じた活動をするための準備でした。そして、2020年に任意団体「WITH PEER」として活動を開始し、2022年秋に一般社団法人として活動を加速させることにしました。
WITH PEERは、PEER(「障害」課題を解決する仲間)と共に「障害インクルーシブ」な社会の実現を目指す団体です。現在は主にティエス市を活動地域にして、「スポーツをきっかけに障害課題に取り組む人的資本の強化」と「スポーツを通じて社会と障害者の繋がりを支える地域共生コミュニティ開発」に取り組んでおります。スポーツは、障害の有無に関係なく人と人とが繋がるきっかけ・ツールであり、そこからどのような空間・コミュニティを形成していけるかが重要であると考えています。セネガル視覚障害者スポーツ連盟、ティエス州障害者スポーツ協会、インクルーシブ教育推進団体、スペシャルオリンピクスや各障害者種別関連団体とも連携をしながら、人材育成・コミュニティ開発を行なっております。
(4)最後に
私たちは、「障害インクルーシブ」な社会実現のためには、PEER(「障害」課題を解決する仲間)の輪が拡大することが鍵だと考えています。私たちは、その輪を広げていくために、ブラインドサッカーやボッチャなどに取り組んでいます。特にボッチャは性別、障害の有無、年齢によらず幅広い人々を「楽しい」でつなぐ力があります。実際にやってみたいというご要望がありましたら、みなさんの職場、学校、活動先にボッチャセットと現地障害当事者と共に伺います。また、ティエスにお越しの際は、ぜひお声がけください。皆様がPEERとなり、ありのままに生きられる「障害なき世界」を共創する仲間となることを願っております。
4 領事便り
○公邸プール開きの開催
6月17日、伊澤大使は、在留邦人の福利厚生充実の一環で、補習授業校の子どもたちに公邸のプール開きを実施しました。
(当日の様子)
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02McGHzPRAs4ArTRWoKSpMW87ZFw7uHwfjgfBrPpuZyrHRb8qnwhdV9J2twScM4C7tl&id=100078921276471
<在留届の届出、たびレジの登録>
○災害や騒乱等が発生した際、ご家族、ご友人、同僚を守るため、一人でも多くの方に安全対策に関する情報が届くよう、在留届(3か月以降の滞在)の届出、又は「たびレジ(3か月未満の滞在)」の登録を、お知り合いの方や出張者・旅行者にご案内いただけますようお願いいたします。
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/simpleAgree.html
5 政治・経済
○伊澤大使のバ最高裁判所長官の表敬
6月6日、伊澤大使は最高裁判所のバ長官を表敬し、今日のセネガル内政における司法の役割や宗教と法律との関係について意見交換をしました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01210.html
○日本企業関係者等との連絡会の開催
6月13日、大使公邸にて日本企業関係者等との連絡会が開催され、日セネガル経済関係等について意見交換が行われました。同連絡会にはジュフ官房長が出席しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01201.html
○日セネガルODA政策協議の開催
6月15日、ダカール市内ホテルにて日セネガルODA政策協議が開催されました。これまでの日本の開発協力案件のレビューや改善点等を踏まえ、今後の協力の方向性等について議論されました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01204.html
○令和5年度対セネガル無償資金協力「人材育成奨学計画」交換公文の署名と交換
6月15日、伊澤修駐セネガル日本国大使及びウリマタ・サール経済・計画・協力大臣との間で、令和5年度対セネガル無償資金協力「人材育成奨学計画」に関する署名と交換が行われました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01205.html
○令和5年度春の叙勲:コル・セック国務大臣への旭日重光章伝達式の実施
6月22日、日本大使公邸にて、伊澤大使は、セネガルのアワ・マリー・コル・セック国務大臣(採取産業透明性イニシアティブ(EITI)セネガル国家委員長、野口英世アフリカ賞選考委員、元保健・社会活動大臣)への旭日重光章(令和5年度春外国人叙勲)の伝達式を行いました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01212.html
○サル大統領の次期大統領選不出馬
7月3日、サル大統領は国民向けの演説を行い、2024年2月25日に予定されている大統領選挙に三選出馬しない意志を表明しました。同演説で、大統領は、6月頭のデモによる多数の犠牲者や被害の発生について言及し、暴動を批判するとともに、国民に向け、民主主義の価値観や法の支配を遵守するよう呼びかけました。
○当館が所掌する4か国(セネガル、カーボベルデ、ガンビア、ギニアビサウ)の政治経済関連の一般情報は、毎月上旬に当館のHP「セネガル基礎情報」及び「新着情報」に「在セネガル大使館月例報告」として掲載しております。ご関心のある方は以下のリンクをご参照ください。
(参考)月例報告:https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01078.html
6 広報・文化便り
○第17回日本国際漫画賞の作品募集
概要は以下リンクのとおりですので、応募条件を満たす方でご関心のある方はぜひ応募ください。締切りは7月7日の予定でしたが、7月12日に延長されました。
(概要)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01149.html
○日本ポップカルチャー紹介イベントMatsuriへの参加
6月18日、当地文化施設Espace Tramesで日本ポップカルチャー紹介イベント「Matsuri」が開催され、当館も出展しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01208.html
○伊澤大使のラストル事業共同組合・青少年省・CESAGとの署名式への参加
6月19日、伊澤大使は、当国からセネガル人実習生を派遣するラストル協同組合、青少年・起業・雇用省、及びアフリカ高等経営学センターとの事業署名式に参加しました。
(当日の様子)https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=pfbid02MErmXRrF4n3QhYqXmjf2HzpR7uNB73AYDkoHpqNJnYhK7enuMiNxY6ayZWDJLz2pl&id=100078921276471
○現地メディア向けプレスツアーでのNGOムラのミライの事業視察
6月20日、当館は現地メディア向けプレスツアーを開催し、プレス一行と伊澤大使は日本のNGO「ムラのミライ」が循環型農業の開発事業を行うンブール県ンゲニエーヌ行政村を訪問しました。
(当日の様子)https://www.sn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_01217.html
○Instagramの開始
当館は、現在実施しているTwitterとFacebookに加え、新たにInstagramを始めました。ぜひご覧ください。
Instagram:https://www.instagram.com/japanembsenegal/
○当館では、日本関連行事に関する情報を随時募集しております。皆様ご自身が実施される日本関連行事のほか、知り合いの方のご活動等についての情報を( mailmagazine-sn@dk.mofa.go.jp )までお知らせください。毎月末までに原稿をいただければ翌月のメールマガジンに掲載することができます。当館HPやSNSへの掲載は随時行います。
○当館のSNSアカウントは以下のとおりです。日・セネガル関係強化のため、是非ご関心のある投稿のRTやシェア等、皆さまのご協力をお願いいたします。
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[在セネガル日本大使館メールマガジン]
○本メールマガジンに関するご意見・ご要望は以下のメールアドレスあてに送信してください。新規配信登録のご希望もこちらまでお寄せください。
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○参考ホームページ
首相官邸ホームページ ( www.kantei.go.jp )
外務省ホームページ ( www.mofa.go.jp/mofaj/ )
当館ホームページ(https://www.sn.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html )
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○発行:在セネガル日本大使館
Ambassade du Japon au Senegal
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TEL :(+221)33.849.55.00
FAX :(+221) 33.849.55.55